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【ブランド】外資の「餌食」となる企業の条件 鈴田孝史(経済ジャーナリスト)

 好況の一方で進む日本株式市場の「韓国化」

 5月1日に新会社法が施行されるため多くの企業は今、その防衛策作りや個人株主作りに努めている。外資によるM&Aが活発化すると見られているからだが、すでに外人保有比率の高い企業は、すぐにM&Aの標的とされないまでも、次々と増配要求を突きつけられ、絶好の「餌食」となるだろう。それは、日本の株式市場も「韓国化」するということである。

 97年、アジア通貨危機の煽りを受けて韓国はIMFの管理下に置かれ、市場の開放、金融自由化を積極的に進めた。IMFの優等生と呼ばれたほど、IMFの指示に忠実に従がい、その結果、韓国経済はV字回復を達成し、長期低迷に苦しんでいた日本も、韓国を見習うべきだとの意見が各方面から殺到したものである。

 だが、生き残った韓国の銀行や優良企業の多くは、安値で株を買い占められ、外人保有比率が急上昇した。韓国市場の時価総額の40%以上を外人が買い占め、土地もまた公示地価計算で10%を買い占められてしまった。そのような状況下で、日本の将来を暗示するような事件が韓国で起きている。12月期決算の多い韓国企業は、株主総会が3月に集中するが、その中で一際、話題を呼んだのが02年に民営化されたKT&G社(旧タバコ人参公社)だった。KT&G社は、傘下に高麗人参会社や優良不動産を多く持つ含み資産の多い企業だ。大幅な増配要求を突きつけるには、絶好の企業だ。

 そこに目をつけたのが、乗っ取り屋とも言われる米国の投資家、カール・アイカーンだ。昨年、大株主として登場すると人参会社の上場や資産売却などを提案したものの、すべてはKT&G社側に拒否される。そこで、社外理事(取締役)の選任を要求し、3月17日の株主総会でその要求を達成している。今後は、社内から様々な経営上の注文を突きつけることだろうが、それはともかくとして、日本企業が教訓とすべきは、アイカーン側が決して企業支配ができるような株数を集めていないことだ。要求を実現させたのは、「連合方式」という新しい手法によるものだった。KT&G社のアイカーン側の社外理事に就任したのは、ウォーレン・リヒテンシュタイン・「スチールパートナーズ」代表である。

「スチールパートナーズ」は、日本でも活躍するヘッジファンドとして、その名を轟かせている。ユシロ化学やソトーの株を買い占め大幅な増配を勝ち取ったことはご存知のとおりだ。

 また、現在でも日清食品や明星食品、キッコーマンなどの大株主に名を連ねている。その「スチールパートナーズ」がアイカーン側の助っ人として連合を組んだのだ。それでも、この連合軍の保有比率は約7%のみ。ならば恐れるに足らず、のはずだが、実はKT&G社の外人保有比率は60%超である。これはなにを意味するかといえば、外人保有率の高い企業は、少ない株主に経営権を奪取される可能性が大だということだ。米系を中心に他の外人株主がアイカーン側に味方したのだ。

 外資への防衛策の不備を露呈するケースが続出

 日本企業の多くは、一株主に株式を大量保有されたときを想定して、その防衛策を練っているが、外資の連合軍に対する防衛策には手抜かりの企業も多い。平成16年度の東証外人保有比率は、まだ23.7%と韓国ほど高率ではないが、昨年7月から猛烈な外人買いによって平成17年度の外人保有比率が大幅にアップしているのは確実だ。すでに昨年3月時点でさえも外人の持ち株比率が40%超の企業だけでも22社に及ぶ。

 しかも、企業は個人投資家の保有比率を高めて防衛策の一助にしようとしているが、日本の個人投資家とて外人株主が会社に増配要求をするのであれば、歓迎こそすれ反対する理由はない。外資によるM&A攻勢は、「三角合併」などが認められる07年年度以降が本番だと見られているが、今年の株主総会でも、定款変更などの特別決議が否決される企業が続出する可能性がある。

 議決権行使者の3分の1の反対で特別決議は否決されるので、すでに30%以上を外資に買い占められている企業は、日本の個人投資家も巻き込めば、会社側提案を否決できる。資産売却などによる増配要求などの株主にとって利益となる提案であれば、外資連合だけでなく、日本の投資家も賛同すると見られているからだ。ちなみに、「スチールパートナーズ」が、約23%の大株主である明星食品は、減益(04年9月期から)にもかかわらず大幅増配に追い込まれている。

 すでに兜町関係者の間では、外人保有比率の高いキヤノン、HOYA、日東電工などが、「増配要求などを突きつけられて外資の餌食になる企業」ではないのかと囁かれている。これらの企業は、日本基準であれば、高配当企業だが、外人保有比率の高い企業に日本基準など当てはまるわけがないからだ。日本の株式市場の「韓国化」は、すでに始まっている。

PROFILE すずた・たかし

1952年東京生まれ。1976年早稲田大学卒業後、生命保険、証券会社、新聞・雑誌記者、雑誌編集長などを経て、現在は経済ジャーナリスト、株式評論家、作家。

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